こんにちは!つくもです。
最近着物を着るようになってちょっとした悩みがあります。
それは…
- 着物って家で洗えるの?洗えないの?
- 縮む・縮まないの違いは何?
- そもそもなんで縮む?
ということ。
検索をすればいろいろな情報が出てきますが、特に「なぜ?」の部分が知りたかったので、調べてみました。
原因1 ちりめんや御召に多い「撚り糸の収縮」
一つ目の原因は、生地が水に濡れた際に「糸の撚り」が元に戻ろうとするために生じる収縮です。
通常、製造されたままの繊維はそのままでは非常に細くて扱いにくいです。
そのため、いくつかの繊維を束にして撚り(回転)をかけることでバラバラにならないように束ねられています。
収縮の度合いは、使われている糸の撚りの強さが大きいほど縮みやすい傾向があります。
ちりめんや御召、伝統工芸品である本塩沢などが水に濡れると大きく縮むといわれますが、これは撚りの強い糸が使われているからだったんですね。
もちろん絹だけでなく綿や麻なども糸に撚りをかけるので、この原因で縮んでしまうことがあります。
糸の撚りで縮むメカニズム
「糸の撚り」が元に戻ろうとすると縮むとはどういうことでしょうか?
少し実験してみましょう。
ここでは青と赤の糸(ボタン縫い糸、ポリエステル100%)を一本ずつ、撚り合わせてみます。
撚りをかける際には、糸を引っ張りながらねじります。
250回ほど撚りをかけると、画像の中央で糸が波打ってきたのがわかるでしょうか?(糸を引っ張る力によりますが)。
この波打ちがちりめんなどに見られる独特のシボ(凹凸)になります。
(実際には撚りのかかった糸をまっすぐに張った状態で糊で固め、織りあげてから糊を落としてシボをつけているみたいです)
さて、この状態で糸が水を吸うとどうなるでしょうか?
吸水すると繊維の膨張などによって引っ張る力が弱くなるので、実験では引っ張りを弱めて再現してみます。すると…
糸が集まってらせん状になってしまいました。
これが糸の撚りによって縮むということです(少し大げさですが)。
こちらの記事では本塩沢を濡らして実験されています!参考にぜひ!(外部リンク)
対処法
糸の撚りによる収縮を回避するには、次の二つが重要になりそうです。
- 糸の引張る力を弱めない
- 水を使わないで洗う
1.引張る力を弱めない方法の一つには、洗い張りがあります。
洗い張りは、きものを反物の状態に戻して洗い、布のりを引き、湯のしや伸子張りで反物の幅を整えるという方法です。
生地の風合いを取り戻し、蘇らせることもできるみたいですよ!
過去には各家庭で普通に行われていたようですが、現代では家庭で行うのはなかなか難しいでしょう。
なので、職人さんに頼むとよいと思います。
ただ、洗い張りの場合は一度着物を解く必要がありますし、寸法や形が変わることもあるみたいです。
2.水を使わない洗濯はどうでしょうか。ドライクリーニングを行うということですね。
ドライクリーニングでは水の代わりに油(石油系溶剤など)を用いて洗濯します。
丸洗い(着物を解かずに丸ごと洗うこと)もできますし、比較的手ごろかなと思います。
ただし、ドライクリーニングでは不得意な汚れ(汗や飲料などの水溶性の汚れ)もあるので、うまく使い分ける必要がありそうです。
原因2 レーヨン、麻、綿などに多い「膨潤収縮」
「膨張収縮」ということは膨らんで縮む?
なんだか矛盾した単語のようですが、服の縮みの原因はこれのことが多いです。
この収縮を起こすのは麻や綿など水を吸収する繊維。
特にセルロースの再生繊維であるレーヨンは吸水性が高いため、大きく縮むようです。
膨潤収縮のメカニズム
糸は水を吸収すると、膨張して径が太くなります。そして径が膨らんだ分、長さ方向は縮みます。
この長さ方向の収縮は一本の糸であれば乾燥によって元に戻ります。
しかし織物の場合、収縮によって糸同士の間隔を狭めてしまい、乾燥してもこの間隔が元に戻りません。
そのため生地全体として縮みが残ってしまいます。
対処法
膨張収縮の原因は次の二つであることがわかりましたね。
- 水に濡れると
- 糸同士の間隔が狭くなる
糸の撚りの場合と同様に、1.水に濡れることが問題ですので、ドライクリーニングをするというのが最もわかりやすい対処法です。
ただ、毎回ドライクリーニングに出すというのもなかなか大変ですよね。
そこで2.糸同士の間隔が狭くなるに注目してみます。
糸同士の間隔が狭くなることが原因なのであれば、縮むのにも限界がありそうですよね。
実際、膨張収縮が原因の縮みは最初の洗濯の時が一番縮むそうです。
簡単には、多くの市販されている綿などの布地は「水通し」といって、あらかじめ水につけて縮ませてあるので、この処理がしてある製品を購入するのがよさそうです。
ただしそうは言っても、洗濯によって縮んでしまうことはあると思います。
その場合には
一度湿らせた後、斜めに軽く引っ張って形を整え、さらに歪みを直しながらアイロンをかける
ことである程度直せるみたいですよ!
こちらの記事が参考になります。
原因3 羊毛など、動物の毛に多い「フェルト収縮」
フェルト収縮は羊毛などの動物の毛を用いた糸で起こる収縮です。
羊毛(ウール)のセーターを洗濯したら縮んでしまった!なんて人も多いのではないでしょうか?
フェルト収縮のメカニズム
羊毛の繊維は表面がウロコ状の表皮で覆われています。
この表皮は乾燥状態だと閉じており、繊維同士を動かしてもそれほど絡みません。
しかし水に濡れるとこの表皮が開き、こすり合わせると繊維同士が絡み合うため、硬化(硬くなる)や収縮(縮み)を引き起こします。
こうした現象のことを「フェルト収縮」と言い、これが縮みの原因です。
対処法
以上のことから、羊毛などの動物の毛を使った布地は
- 水に濡れることで表皮が開き
- 摩擦が加わると繊維同士がからむ
ことで収縮が起こることがわかりました。
1. 水に濡れる要因から、羊毛など水を使わないドライクリーニングが良いということになります。
ドライクリーニングであれば繊維の表皮が開きにくいため、こすり合わせてもフェルト収縮が起きにくくなります。
しかしこれでは「結局ドライクリーニングかよ!」となってしまうので、
2. 摩擦で繊維が絡む要因を考えてみますね。
表皮が開いた状態で摩擦が加わると繊維同士がからみ合ってしまうのであれば、繊維同士をこすらせなければよさそうですね!
推奨するわけではありませんが、羊毛生地などをどうしても自宅で水で洗いたい!という場合は濡れた状態でこすったり、揉んだりしないように注意しながら洗濯してください。
もともと羊毛などの繊維は汚れが付きにくい性質があるので、ガシガシ洗わなくとも十分きれいになると思います。
また最近では、自宅で洗うことができる「ウォッシャブルセーター」も販売されています。
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こうしたセーターでは防縮加工が繊維に施されています。
その方法は主に2つ。
1つ目は、繊維の表面を樹脂でコーティングする方法。水中で繊維同士にもみ作用を加えても、絡み合わないようにしています。
2つ目は、繊維の表面にあるウロコ状の端を切除する方法。からみ合うギザギザ部分を無くしてしまい、もみ作用で絡み合うことを防いでいます。
自宅で洗いたい!という方はこういった加工が施された製品を購入するとよいと思います。
原因4 熱による収縮(ナイロンやポリウレタン)
熱による収縮は、主にナイロンやポリウレタンなどの合成繊維で起こる収縮です。
そのため洗濯というよりも、乾燥機を利用した際に縮んでしまうことがよくあります。
これには繊維そのものの性質と、作り方が影響しているんです。
熱収縮のメカニズム
合成繊維は通常、熱を加えて溶かしたチップを口金から押し出し、巻き取られ延伸(長さ方向に引き伸ばす)されて製造されます。
そして合成繊維には、温度が下がったときの形状をキープするという性質があります。
つまり、製品になっている合成繊維は温度が比較的低いために、引っ張られた形状を保っている状態なんです。
しかし、乾燥機などで再度熱を加えてしまうと、繊維は引っ張られた状態から元に戻ろうとします。
プラスチックは原子が鎖のようにつながっており、それが絡み合って形をつくっています。そしてプラスチックにはその鎖が動きやすくなる温度(ガラス転移温度:Tg、種類によって変わる)というものがあり、Tgより高い温度ではプラスチックを変形させることができます。さらに温度をTgより急速に下げると、その鎖の形のまま動けなくなります(準安定状態で凍結)。しかし再度温度をTgよりも上げると、変形していた鎖は力の加わっていない元の状態に戻ろうします(構造緩和)。この加熱によって軟化し,成形できるようになり,それを冷却すれば固化する特性を熱可塑性といいます。
これが合成繊維が乾燥機で縮む原因です。
対処法
さて、上記より合成繊維などは
- 熱によって元に戻ろうとするため縮む
ということがわかりました。
こちらに関しては、高温の洗濯や乾燥機は使わないくらいしか対処法はなさそうですね…
元々合成繊維は天然繊維よりも乾きが早いものが多いので、低温で洗って普通に干すというのがよさそうです。
しかし注意していてもうっかり乾燥機に入れてしまい、縮ませてしまうこともあるでしょう。
そんな時はスチームアイロンなどで、熱と水分を含ませながらゆっくりと手で伸ばしていきます。技術が必要ですが、少しの縮みであれば直せるようになるそうです。
まとめ
洗濯によって着物が縮む原因を調べてみると、主に以下の4つがあることがわかりました。
- 「撚り糸の収縮」
- 「膨潤収縮」
- 「フェルト収縮」
- 「熱による収縮」
まとめてみると、着物に限らず衣服に用いられる天然繊維は水に弱いものが多いことがわかりました。
しかし、手入れをする方法が全くないわけではなさそうです。
正しい知識・正しい洗濯方法を身に着けて、大切な着物をできるだけたくさん着てあげたいですね。
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