MENU

服の素材の特徴と繊維のかたち

衣服に用いられる素材って色々な種類がありますよね。

素材の特徴を知っていて、用途ごとにうまく使い分けている人もいると思います。

でも、その特徴を持つ理由って知りたくありませんか

素材・生地の特徴を決める要因の一つに繊維断面の形があります。

そこで本記事では

「服の素材ってたくさんあるけど、何が違うの?」

「それぞれ特徴があるけど、なんで違うんだろう?」

といった疑問にお答えするべく、

生活に役立つ代表的な素材の特徴と、一歩踏み込んだ「なぜ?」繊維の断面から解説しました。

目次

動物性繊維

出典: てふてふさんが制作(photo AC

絹(シルク)

特徴
  • 上品で美しい光沢
  • ドレープ性が高く高級感がある
  • 滑らかな肌触り
  • 吸湿性・通気性・保湿性にも優れる
弱点
  • 摩擦に弱い。摩擦で繊維が割れて毛羽立ち、白っぽくなる。
  • 紫外線に弱い。黄色~褐色に変色する。
  • 水に弱い。シミの跡が残る。特に、撚りの強いものは縮みやすい。
  • 虫害がある。

絹は蚕の繭からとれる天然繊維です。

天然繊維の中では唯一の長繊維で、独特の光沢滑らかな質感を持ちます。

その美しい光沢のため、古来より高級品貴重品として扱われてきました。

■ 絹糸の拡大図

繭糸の電子顕微鏡写真
引用元:農研機構『カイコってすごい虫!』
引用元:World. HP「素材の知識」

繭糸は内側のフェブロインセリシンというノリのようなたんぱく質が取り囲んでできています。

周りのセリシンは精練という工程で除去され、中のフェブロインが絹糸として用いられます。

この三角形の断面が、美しい光沢を生み出しています。

またフェブロインは数種類の組織からできた複雑な構造をしていて、組織同士の間に空間があるため軽く、さらに吸湿・保温効果をもたらします。

加えて絹は天然繊維の中で唯一、長繊維に分類されます。この長く、細く、強い繊維は美しい光沢だけでなく、ドレープ感滑らかな肌触りを与えています。

羊毛(ウール)

Photo by Kaboompics .com from Pexels
特徴
  • 保温性・吸湿性が高い
  • 弾力性・伸縮性に富む
  • しわ・型崩れが起きにくい
  • 水をはじき、汚れが付きにくい
弱点
  • 毛玉になりやすい
  • 洗うと縮む(フェルト状になる)
  • 虫害がある

羊毛は読んで字のごとく、羊の毛の繊維ですね。メリノ種という品種が優れた品質を持っており、一般的です。

ただしウール(Wool)と表現する場合には動物の毛全般(モヘヤ、カシミヤ、アルパカなど)や羊毛状のもの(グラスウールやスチールウールなど)を表すこともあるようです。

保温性に優れるため、セーターなどの冬物厚地衣料としての印象がありますね。

しかし、羊毛を細く依って織られたサマーウールは通気性に富むので、実は年間を通して使われる素材です。

■ 羊毛の拡大

羊毛の電子顕微鏡像
引用元:日本化学繊維協会
ウールの構造
引用元:World CO.「素材の知識」

羊毛などの獣毛の表面は鱗のような表皮(スケール)で覆われています。

この表皮水をはじき汚れにくい性質をもっています。

一方で内部水分を吸収する性質を持っていて、表皮が外気の変化に応じて開閉することで、羊毛は水をはじくのに吸湿するという特徴を持ちます。

繊維の内側はA-コルテックスとB-コルテックスという性質の異なる2種類の細胞がはり合わさったような構造でできています。

この細胞同士の性質の違いによって繊維がバネ状に反ることで弾力性が生まれ、元に戻る(しわになりにくい)性質を持ちます。

さらに、この縮れた繊維同士が複雑に絡み合うことで空気を含むことができ、熱が伝わりにくい(保温性が良い)構造になっています。

植物性繊維

DWilliamsによるPixabayからの画像
特徴
  • シャリ感(硬い手触り)があり、肌に張り付かず涼感がある
  • 光沢があり通気性が良く、吸湿性・発散性に優れる
  • 水や摩擦に強く、濡れると強度が増す性質がある
弱点
  • 弾力性がなく、シワになりやすい
  • 染料が浸透しにくく、色が落ちやすい
  • 直射日光で色あせしやすい

「麻」はもともとは大麻(ヘンプ)を表す言葉でしたが、現在麻製品として流通している繊維は亜麻あま(リネン)と苧麻ちょま(ラミー)がほとんどです。いづれも植物の茎などからとれる繊維であり大きくは似ていますが、植物の種類が異なるため少しづつ異なった特徴を持ちます。

通気性が良く肌に張り付かない特徴があるため、高温多湿な日本の夏に適した素材です。

■ 亜麻あま(リネン)の拡大図

亜麻は亜麻科の一年草(一年以内に発芽から開花、枯死する植物)です。

断面が絹の繊維と似ているものがいくつか見られますね。繊維が細くて短く、しなやかで絹に近い感触があります。

繊維の内部が中空になっていて、水分を取り込むことができるため吸湿性が高いです。

日本で流通している「麻」繊維のほとんどはこの亜麻からとれたものです。

 苧麻ちょま(ラミー)の拡大図

苧麻はイラクサ科の多年草です。

断面が亜麻とは異なり、太くて長い繊維であるため張りがありシャリ感が強いです。

また扁平な形をしていて、光沢感が強い特徴を持ちます。

大きな中空を持つため亜麻よりもさらに高い吸水率と発散率も持ち合わせています。

国の重要無形文化財に指定されている小千谷縮や越後上布の原料です。

■ 大麻たいまの拡大図

大麻は麻科の一年草です。

太さにバラツキがありますが、亜麻と苧麻の中間のような断面をしており、強いシャリ感を持ちます。

また苧麻と同様に大きな中空を持つため吸水率・発散率が高く涼感があります。

繊維がとても丈夫なため日本では古来から神事などに用いられてきました。

・・・が、現在は規制されており、日本工業規格(JIS)では「麻」の表示ができないことになっています。

木綿(コットン)

写真提供 Bicanski から Pixnio
特徴
  • 柔らかな肌触り
  • 吸水性・通気性に優れている
  • 染色しやすい
弱点
  • 縮みやすい
  • しわになりやすい
  • 毛羽立ちやすい

木綿(コットン)は木綿の種から取れる「種子毛」を原料とした繊維です。

非常に古くから用いられている繊維であり、吸水性に優れ肌触りも柔らかいため着やすいので、日常着として広く用いられています。

身近な繊維ではありますが、繊維の長いものほど希少価値があり、高級品として扱われます。

■ 木綿の拡大図

木綿の電子顕微鏡像
引用元:日本化学繊維協会

綿繊維の断面は扁平な形で、天然のよじれがあります。

このよじれによって、紡いで糸にするときに繊維同士が絡み合うため、紡績に適しています。

また麻繊維と同様に内部は中空になっており、軽さ高い吸水性を持ちます。

画像では切断面を見ていますが、先端部分は丸くなっているため軟らかく優しい肌触りになっています。

再生繊維

レーヨン

出典:Wikipedia
特徴
  • 美しい光沢
  • 繊維が柔らかく、ドレープ性がある
  • 吸湿性が高く、さらっとした肌ざわり
  • 染色性にすぐれる
  • 繊維そのものに機能を加えることができる
弱点
  • シワになりやすい
  • 水分を含むと収縮しやすく、強度も低下する
  • 水滴や雨によって、シミになることがある
  • 擦れやすく、毛羽立ちやすい。白っぽく見える。

レーヨンは絹糸を人工的に製造しようという試みから生まれ、進化を遂げてきた繊維です。

現在は木材パルプに含まれている繊維(セルロース)を一度薬品で溶かし、細長い繊維に再生して製造されることから、再生繊維と呼ばれています。

■ レーヨンの拡大図

レーヨンの電子顕微鏡像
引用元:日本化学繊維協会

レーヨンの表面には凹凸があり、光を乱反射するため、絹に似た独特の光沢をもちます。

またセルロースの特徴である吸水性・吸湿性を持つため、さらっとした肌触りがあります。

加えて、繊維として再生する際に機能性材料を練りこむことができ、

  • 抗菌・防臭・消臭効果  
  • 涼感・遮熱効果
  • 発熱・温度調整効果

などの機能を繊維に直接加えることができます。

発熱効果をもつレーヨンはユニクロのヒートテックにも用いられているそうです。(レーヨン・アクリル・ポリウレタン・ポリエステルの組み合わせ)

合成繊維

Markéta MachováによるPixabayからの画像

ポリエステル

特徴
  • 繊維が強く、丈夫
  • 縮み・型崩れが起きにくい
  • 速乾性がある
  • シワになりにくい
  • 水・薬品・虫害に強く、保管が容易
  • 熱を加えると形が固定され、プリーツの保持力が高い
弱点
  • 静電気が起きやすい
  • 毛玉になりやすい
  • 汚れを吸着しやすい

ポリエステル繊維は元をたどると石油や天然ガスから作られる素材です。

ポリエステルといっても複数種類があるのですが、最も多く生産されているのはペットボトルなどにも用いられるポリエチレンテレフタラートPET)です。

繊維が耐久性に優れ速乾性などの機能もあるうえに低価格なので、日常使いの衣服によく用いられます。

また紡績方法や他素材を練り込むことで、天然繊維に似た風合いを作り出すこともできるため、さまざまな用途で広く使われています。

■ ポリエステルの拡大図

ポリエステル繊維(丸形)の電子顕微鏡像
引用元:日本化学繊維協会

ポリエステル繊維はポリエステルチップを溶融し、口金から押し出して繊維にされます。

そのため口金の形状によってさまざまな断面の繊維を作り出すことができます。(詳しくは異形断面糸で)

通常は画像のような丸形。繊維が詰まっており、吸水性が低いため速乾性があります。

進化する合成繊維(異形断面糸)

合成繊維は通常、口金から押し出して繊維にされます。

そのため口金の形状や製法を工夫することで、合成繊維はさまざまな断面の形を持つ糸を自由に作ることができます。

このような断面にすることで、吸湿速乾軽量保温高通気透け防止静電気防止などの多彩な機能が生まれます。

以下ではその一部を紹介します。

Octa®電顕写真
引用元:帝人フロンティア

帝人のオクタ®は穴の空いた中空糸に、8本の突起を放射線状に配列したタコ足型断面のポリエステル繊維で、従来の中空糸を超える軽量感吸汗速乾性遮熱性が特徴です。

用途

ファッションウエア、スポーツウエア等の衣料
カーテン等の資材など

<ソフィスタ>の電子顕微鏡像
引用元:クラレ

クラレの<ソフィスタ>はポリエステルを芯に、クラレ独自のポリマーを鞘にした構造の繊維です。冷感速乾光沢など様々な特徴を持ちます。

用途

スポーツウェア、ファッションウェアなどの衣料
寝装(シーツ、枕カバー)
スポーツシューズ など

ペンタス®αの断面
引用元:東レ

東レのペンタス®αは扁平な断面形状の繊維の表面に微細な凹凸を施した原綿です。高い吸水拡散性高い耐久性を持ち、透け防止UVカット効果も期待できます。

用途

スポーツウェア、ファッション衣料
寝装、タオル、マットなどの生活資材
衛生材、ワイピング、コスメティック関連の不織など

まとめ

着物を含め、衣料に用いられる素材の特徴を、繊維の断面から見てまとめました。

断面も含めてみてみると、吸湿性のある素材の繊維には隙間が空いていたり、美しい光沢がある素材の繊維には形状に特徴があることなどがわかりますね。

また本記事ではほんの一部ですが、再生繊維・合成繊維が素晴らしい発展を遂げていることがわかりました。これからさらなる進化も期待されます。

「絹だから良い」とか「ポリエステルだから安物」ということではなく、素材ごとに得手・不得手があります。用途ごとにうまく使い分けたいですね。

本記事が面白い!役に立つ!と思っていただけたなら、ぜひシェアをお願いします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

着物が趣味の博士(工学)。研究職でしたが、着物熱が高じて着物屋に転身しました。 ファッションとして着物を楽しんでます!

コメント

コメントする

目次